19

気が付けば日が昇り、彩音たちは白んだ景色を一層白く染める深い霧が立ち込める谷底へ身を移していた。血相を変えて慌ただしく崖を降りてきた一同は犬夜叉と桃果人が落ちたであろう場所に視線を巡らせる。 だがそこに見つかったのは人面果がなる木の傍にうつ伏せで横たわった桃果人だけであった。 「桃果人は…死んでいる」 「犬夜叉はっ…!?」 桃果人が息絶えたことで仙術が解けたのだろう、元の大きさに戻った弥勒が大きく血を広げて動かなくなった桃果人を見据えるが、隣に立つ彩音はそれに目もくれず周囲へ視線を巡らせ続けていた。 しかし、どれだけ懸命に目を凝らして辺りを見渡せど、犬夜叉の姿は見つからない。そのせいか、嫌な予感がほんの一瞬ながら確かに脳裏をよぎった。 そして同様の思考に至ったのだろう、桃果人の下に大きく広がる血を見つめる七宝が焦るように口にした。 「桃果人の下敷きになっとるんじゃないか!?」 「そ、そんな…」 「いや…いやっ、犬夜叉!!」 「救わねばっ!」 信じたくはない。だが自身もそれをよぎらせてしまった以上否定しきれず、彩音は咄嗟に桃果人に手を掛けてその体を退かせようとした。するとそれに続く弥勒がすぐさま桃果人の下へ錫杖を差し込み、かごめと七宝も「犬夜叉ーっ!」「ううっ重いっ!」と口々に声を上げながら桃果人を持ち上げようとする。 だが、どれだけ力を込めようとも今まで十分すぎるほどに蓄えてきた桃果人の大きな体は一向に動く気配を見せなかった。 「犬夜叉っ…出てきてよ…犬夜叉っ…!」 それでも懸命に桃果人の体を押し退けようとする彩音は、懇願するように何度も犬夜叉を呼び続ける。どこでもいい、どこにいてもいいから出てきてほしいと、返事をしてほしいと願いながら。 ――するとそんな時、人面果の木の上で知らぬ間に気を失っていたらしい犬夜叉が誰にも聞こえないほど小さな声で「ん…?」と漏らしながらゆっくりとその目を開いた。 「(朝か…ちくしょう忌々しい。もう少し早く妖力が戻ってれば…)」 明るくなっている空を見てはだるそうに上体を起こし、やり場のない苛立ちを抱えながら肩をごきっ、と鳴らす。 どうやら犬夜叉は木の生い茂った葉に受け止められたことで生き延びられたようだ。そして妖力を取り戻したからであろう、折られたはずの腕も平然と動かせるまでに回復している。 散々いたぶられたおかげで体にだるさはあるが、もう問題なく動けるだろう。彩音たちの元へ戻るか、と考えたその時、突然木のすぐ下から「わーん!」と大きく泣きわめく七宝の声が響いてきた。 「犬夜叉は死んだんじゃ~っ!」 「なっ…ま、まだそうとは…」 「ひどいケガしておったし…人間の体であんなガケから落ちたら…助かるわけがなーい!」 とめどなく涙をこぼしながら大声を上げる七宝。それに反論しようとした彩音であったが、彼の言葉を耳にしては次第に表情を曇らせて強く唇を噛みしめていた。 彩音も分かっていたのだ。人間の体ではあの高さからの落下に耐えられるはずがないと。だからこそ否定しようとした言葉は、力を失うように喉につっかえてしまう。 たまらずグ…と爪が食い込んでしまいそうなほど強く手を握り締める。そんな彩音の様子を見兼ねた弥勒は宥めるように彼女の手をそっと握り、同様に七宝の背中を撫でた。 「泣くな七宝。皆で供養してあげよう」 「弥勒さままでそーゆう…」 かごめもやはり信じたくないのだろう。咄嗟に否定の声を上げようとしたのだが、弥勒がそれを止めるほど真剣な表情で説得の声を紡ぎ始めた。 「犬夜叉は…本望だったのでしょう。命を投げ打ってでも…彩音さまたちを救いたかったのでしょうから」 そう語られる言葉に、木の上で耳を傾けていた犬夜叉がほんのりと頬を染める。事実、彩音を助けた時は弥勒の言葉通りの思いであった。だがこうして元の姿に戻り、冷静になった今それを聞くのはやはり気恥ずかしいものがある。 犬夜叉はなんとなく照れくささを覚えてしまいながら、それでもどこか期待を抱くような思いでそっと彩音の様子を窺ってみることにした。 だが、どうしてか彩音の表情は一向に晴れる様子がない。それどころか、感情を押し殺すようにさらに拳を握りしめる。 「…なにそれ…それで私が喜ぶと思ってんの…? 感謝するとでも思ってんの? あのバカ…」 「(な゙っ! こ、この女泣きもしねえで…)」 わずかに怒気を孕んだような声で呟く彩音に目を丸くした犬夜叉はむかっ、と怒りを覚える。感謝くらいはしてくれるかと、涙を流すくらいはしてくれるかと思っていたのに、視線の先の彩音にはそのどちらもないどころかむしろ機嫌が悪いくらいだ。 それを理解できずに正気を疑うような目で見ていれば、そんな犬夜叉に気が付くこともない彩音はただ小刻みに体を震わせながら言う。 「妖力もない状態であんなに無茶して、挙句命投げ捨てて…それで喜ぶ奴がどこにいるっていうの!? そんなことも分かんないの!? バカ! 犬夜叉の大バカ野郎っ!」 「そうよっ。彩音の言う通り、バカよ犬夜叉は!」 「確かにバカでしたな…」 「大バカ者じゃーっ!」 「てめえら言わせておけば…」 突如すー…と音もなく弥勒と七宝の背後に現れる犬夜叉。それに弥勒がどこか“やべ”というような顔を見せる中、まさか生きていたとは思ってもみなかった七宝が弾かれるように犬夜叉に飛びつきながら再び大きく泣きわめいた。 「生きとったか犬夜叉ーっ!」 「悪かったなー」 「なにをひねくれているのです」 「うるせえな。そんなことより弥勒、さっさとその手を離しやがれ」 そう言いながらじと、とした目を向ける犬夜叉は彩音の手を握る弥勒の手を鋭く指差した。 しかし、それよりもずっと気になるのは、俯いたままこちらを見ようともしない彩音とかごめの反応。未だショックの余韻を感じているのかと考えた犬夜叉はそんな二人へ呆れたように、そしてどこか気恥ずかしそうに言いやった。 「おれが簡単にくたばるわけねえだろ。くだらねえ心配しやがって」 「くだらないってなによっ! あんた…」 冷めたような犬夜叉の反応にかごめが反発しようとした、その時だった。顔を俯かせたまま不意に振り返った彩音が犬夜叉の傍らへ歩み寄り、突如彼の腰へどすんっ、と思い切り蹴りを決め込んでしまったのは。 「でっ!? て、てめえなにしやが…」 突然の攻撃に戸惑うまま怒鳴ろうとした犬夜叉の声を遮るよう、目の前で彩音の髪がフワ…と揺れる。それにほんの一瞬目を奪われるような錯覚を抱いたのち、気が付けば犬夜叉の胸には縋りつくように体を預ける彩音がいた。 一体なにが起こっているのか。唐突すぎる出来事の連続に理解が追いつかない犬夜叉は何度も目を瞬かせ、ついにはたまらず「彩音…?」と呼び掛けた。すると俯いていたその顔が音もなく上げられ、きっ、と強く睨み付けられる。 「あんなの心配するに決まってんでしょうがこのバカっっ!」 「げ。な゙、な゙」 突如豹変したように怒鳴ってくる彩音の姿に思わずたじろいでしまうほど目を丸くする。だが一層驚いたのは、彩音がぼろっ、と涙をこぼし始めたことであった。 「あんたは隠してたつもりかもしれないけどねっ、こっちはあんたが無理して頑張ってたのぜーんぶ分かってんの! バレバレなの! それで心配しないわけないでしょ!?」 「助かったからいいじゃねえか、泣くなっ」 「泣くわバカ! 犬夜叉が生きてるって分かったら、安心して、嬉しくて…ううう…生きててよかったあ~っ」 言いながらわーん、と泣きわめく彩音の言葉に犬夜叉は“お…怒ってたんじゃねえのか!?”と大きく狼狽えるほど戸惑ってしまう。そんな犬夜叉に気が付くこともない彩音はもはや八つ当たりをするように何度も彼を叩き続けていた。 それ自体はさほど気にならなかったのだが、いつまでも泣き止みそうにないその姿に困り果て、犬夜叉は叩いてくるその手を掴んで止めさせる。そうしてもう一方の手で彩音の頭をわしわしわしと雑に撫でまわしながら、どこかやけくそ気味に、ぶっきら棒に言いやった。 「も、もう十分泣いただろっ。さっさと泣き止めっ」 「…ぐすっ……ん…」 少しは気が晴れたのか、大人しくこくん、と頷く彩音。見ればその顔は涙でぐちゃぐちゃになってしまっていて、驚いた犬夜叉が呆れた顔をしながら親指でぐいぐいと拭ってくれた。 「ったく、汚ねえな。泣きすぎだ」 「うっさい…汚いって言うなバカ」 あんたのせいでしょ。そうぼやくように付け足しながらジト目で反論し、鼻をずび、と鳴らす。 ――その時、突如傍に転がる桃果人の体がボロボロと砂のように崩れ始た。一同がそれに気が付き視線を向ける中、やがて桃果人の体が霧散するように大気へ溶け消えてしまうと、木になっていた無数の人の首も同様にシュー…と音を立てながらその姿を変えていく。 「人面果が木の実に…」 「桃果人の仙術が解けて、昇天なされたのでしょう。箱庭に捕らわれていた人たちも、今頃、元に戻っているはず」 * * * しばらくの後、一行は勉強のために帰宅するかごめを骨喰いの井戸まで送ると、そのまま森の中で夜を迎えていた。 かごめは現代へ戻る際、本当に戻っていいのかと躊躇いを見せていたのだが、彼女が勉強をしているその間に犬夜叉を休ませる、ということにして説得し、一応の納得をしてもらっている。そして、普段通りならば彩音もかごめとともに井戸を通っているところだが、またなにかのはずみで二〇一六年に帰ってしまうかもしれないことが怖く、井戸の中へ飛び込むことができないでいた。 恐らくは今まで通りかごめの時代に帰れるのだろう。だがその確証がないため、「無理はするな」と言ってくれた犬夜叉に従って戦国時代に残ることにしたのだ。 そうして焚き火をこしらえた今、犬夜叉、彩音、弥勒、七宝といった並びで揺れる炎を囲んでいる。 「……」 火の中で枝が小さく爆ぜる音を聞きながら、彩音はぼんやりとそれを眺めていた。その脳裏に思い出すのは、かごめを井戸へ送った時のこと。その時繰り広げられた他愛のないやり取りであった。 「かごめが戻るまで休まねばっ」 「腕がちょっと痛えだけだ」 「思いっきり折られてましたからなー」 そんな三人の言葉を思い返し、同様に、人間の姿で桃果人と闘っていた時の犬夜叉の姿を思い出す。ひどく痛めつけられ全身に深い傷をいくつも作り、挙句腕まで折られたあの時の彼を。 きっと普段の半妖の姿ならば、あれほど苦戦することも追い詰められることもなかったはずだ。それを思うと彩音は黙り込んだまま、そっと横目に犬夜叉を捉えた。 (半妖の体って…私が思ってるよりずっと大変なんだろうな…) 自分には想像しがたいその事象に、ほんの微かに眉根を寄せる。 月に一度、完全に妖力を失い無力な人間へと変わり果ててしまう。そして今回のように、そのタイミングで強い妖怪と出会えば命の危険だってあるのだ。だからこそ犬夜叉はそんな半妖の体を疎み、かつては完全な妖怪になるためにと四魂の玉を欲していた―― 「……ねえ犬夜叉…いまでも妖怪と人間、どっちになりたいとか…ある?」 ぽつりと呟くように、そう問いかける。人間まで選択肢に上げたのは、妖怪の時同様に過去の彼が望んだからだ。桔梗と恋に落ち、彼女から人間にならないかと誘われて実際にその道を選ぼうとしたことがあったから。 だからこそどちらを選ぶのか、まだ選ぶような気持ちがあるのかと思い問いかけたのだが、それを向けられた犬夜叉はどこか訝しむようわずかに眉をひそめた気がした。するとそんな彼へ、同様に気になっていたらしい弥勒も「どうなんです?」と問いかける。 そんな周囲の様子に小さく口を結んだ犬夜叉は、やがてどこか不愛想な表情を見せながら当然のように淡々とした声色で言い切った。 「妖怪になりてえに決まってんじゃねえか」 「……」 「はあ、そんなものですか」 彩音が胸の奥で微かに感じた形容しがたい思いに小さく唇を結ぶと同時、気の抜けた声を返す弥勒は至極平然としており、串に刺したヘビを炙るべく焚き火の傍へと立てていた。 それに対し、犬夜叉はほんのわずかに眉根を寄せながら吐き捨てるようにわけを話す。 「弱くちゃなんにもできねえからな。気に食わねえ奴がいたって、力で負けたらおしまいだ」 「桃果人には人間の体で勝ったではないか。それではいけませんか?」 「てめえ、おれがどれだけ苦労したか…」 「…やっぱりいけませんか」 大きく顔を引きつらせて迫ってくる犬夜叉に弥勒は半ば分かっていたという様子でとぼけたように返す。 やはりというべきか、四魂の玉を狙う理由を聞いたあの時から犬夜叉の気持ちは変わらないようだ。それを思い知らされた彩音は胸の奥に形容しがたいもやのようなものを感じた気がして、掛けるべき言葉も分からないまま口をつぐんでいた。 すると冷静な表情を見せる弥勒が犬夜叉を見据え、どこか問い質すように表情同様の声を向ける。 「しかし犬夜叉、お前が四魂の玉の力で妖怪になった時、お前は、お前のままでいられるのでしょうか」 抑揚少なく紡がれるその言葉に、彩音がたまらず「え…?」と小さな声を漏らす。質問の意図が読めず、弥勒が一体なにを言いたいのか理解できなかったのだ。そしてそれは犬夜叉も同じようで、訝しむように眉をひそめては「どういうことでい」と問い返した。 それに、弥勒は普段通りの調子でさらに問いかける。 「犬夜叉お前…四魂のかけらの妖力を使って、良いことをしている者を見たことがありますか?」 「ねえよ」 「私は思うのです。四魂の玉の妖力を得る者は引き換えに、心を失うのだと…」 不意にわずかながら眉根を寄せ、真剣な瞳でそう語る弥勒。その言葉に彩音がドキ…と鼓動を響かせると、言葉を向けられた犬夜叉は気に食わないとでも言いたげに「けっ」と強く吐き捨てた。 「おれは別に、いい妖怪になりたいなんて言った覚えはねえぞ」 「だがお前は、彩音さまやかごめさまを守りたいと思っている。そのためにも力が欲しい。しかし…四魂の玉を使って妖怪になった時お前は…かごめさまや七宝を喰い殺すのかも知れません」 「「!」」 冷静に語られる残酷な結末に犬夜叉だけでなく彩音までもが目を見張り汗を滲ませる。 確かに弥勒の言う通り、今まで目にしてきた四魂のかけらの妖力を得た者たちは誰彼構わず襲い、とても善良とは言えない者たちしかいなかった。もし本当に四魂の玉の妖力と引き換えに心を失うのだとしたら、それまで大切にしていたものさえ失ってしまうことは避けられないだろう。 それを思った途端、二人は声を詰まらせるように言葉を失ってしまう。 そんな時、同じく話を聞いていた七宝が突然怯えたように弥勒へ泣きついた。 「おらもか!? 弥勒は喰われないのか!?」 「そ…そういえば、私も入ってないんだけど…」 「彩音さまは不死らしいですし、なにより私が連れてとっとと逃げます」 「なぜおらたちも連れて行かんのじゃっ」 なんとも自分勝手な回答をしてしまう弥勒をぽかぽかと叩きながら抗議する七宝。そんな姿に彩音が苦笑を浮かべてしまうと同時に、犬夜叉は自分だけいい思いをしようと企む弥勒に白い目を向けていた。 だがそれも束の間。徐々にその表情を強張らせていく彼は、胸のうちで悪態づくように反論の言葉を紡ぎ始めていた。 「(くだらねえ! 今まで関わった妖怪どもは、最初からろくでもねえ奴らだったんだ。おれは…おれの心は変わらねえ)」 人知れず抱え込んだ強い思い。それは誰に否定されるでも肯定されるでもなく、ただ静かに胸の奥深くへと沈んでいった。 * * * ――翌日、森に囲まれる小さな村。一見平和そうに見える村だが、そこからは焦燥感を孕んだ緊迫の声が騒がしく上がっていた。 「来た! 森から出るぞ!」 「退治屋さん、頼む! 大ムカデが来る!」 懇願のようなその声が響かされた直後、バキバキバキと激しい破壊音を鳴らしながらとてつもなく大きなムカデが木々の向こうから飛び出してきた。その眼前には慌てて逃げ惑う村人たちと、体よりも大きなブーメランらしき武器を掲げた“退治屋”と呼ばれる女の姿。 髪をひとつに束ね、体の節々に防具を着けたその退治屋は目の前に迫る大ムカデに一切臆することもなく、まるでその行く手を阻むかのように立ちはだかりながらその姿を鋭く見据えていた。 「飛来骨!」 突如その声を響かせると同時に勢いよく放たれる武器、飛来骨。それは凄まじい速度で回転を繰り返しながら大ムカデへ迫ると、その巨大な体を一撃で容易く断ち切ってみせた。 その残骸が地面へ沈むその刹那――崩れ落ちる大ムカデの肉片からなにか小さな光が弧を描いて飛んでいく。 「やっぱり四魂のかけら…か」 力なく地面に転がり淡い光を見せるそれを拾い上げながら、退治屋は分かり切っていたかのように小さく呟く。そこへ村人たちが歩み寄ってきては、退治屋の手の中のかけらを不思議そうに見つめた。 「退治屋さん、それは…?」 「これが元でムカデが凶暴化したんだね」 手のひらに乗せた四魂のかけらを村人へ見せながら説明しては、そのまま「納屋を借りるよ」とだけ言い残した退治屋は傍の納屋の中へと消える。 そこで身に着けていた防具や戦闘服を全て脱ぎ、防毒面を外して髪を解く。それをもう一度低い位置で結び直すと、あっという間に平凡な着物へ着替えた彼女は大きな飛来骨をいとも簡単に背負い込んだ。 「それじゃまた。ご用があったらお呼びください」 「退治屋さん、お礼の方は…」 「いいよ。これもらってくから」 どこか戸惑ったように言う村人たちへ断りを入れる彼女の手には、先ほど手に入れた四魂のかけらがひとつ。光に透かすように摘まんだそれを見つめながら、退治屋は淡々とした声色で呟くように言った。 「元々四魂の玉は、うちの里から出たものだからさ」

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