2018.01.23

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雪がちらついていた昨晩、私たちは雪よけとして洞窟に身を置いて休んでいた。のだけれど、なんだかやけに寒くて目が覚めてしまった。焚火は消えてないけど…弱まってるな。拾ってきた枝を足して二度寝しよう。 なんて思ったのに、なにやら外がいつもより光り輝いている気がした。 そんな違和感にのっそりと体を起こして洞窟の外を覗き込んでみれば、なんと外は一面まっさらな銀世界へと変わってしまっていた。 「うっそー…そりゃ寒いわけだ…」 さすがに積もるまではいかないと思ってたのに、思いっきりぎっしり積もってらっしゃるではないですか。むしろこんな中で寝ててよく生きていられたな。焚火がなかったらやばかった。 「わあ、すごいね!」 「りんちゃん、起きたの?」 「うん。ねえねえ、みんなで雪合戦しようよ!」 同時に起きたらしいりんちゃんからとっても元気な提案が出て来る。雪が嬉しいのかも知れないけど…私はちょっとやめておきたい。だってめちゃくちゃ寒いもん。 どうにかりんちゃんの気を逸らして諦めてもらおうと思っていたら、りんちゃんの声に目を覚ました邪見がのそのそと歩み寄って来た。 「なんじゃ騒がしい…って、あらやだ真っ白」 「邪見さまも雪合戦しよっ。殺生丸さまが帰って来るまででいいから!」 「雪合戦~?」 しまった。りんちゃんが邪見にまで提案してしまった。 とはいえ、邪見は面倒くさがるだろうから心配はいらないか。りんちゃんにはさっさとやんわり断ろう、と思っていればなにやら邪見が変な顔で私を見つめて来ていた。 「……なに」 「今日こそわしとお前の立場をはっきりさせる時がきた!わしと勝負しろ!」 「はああ!?」 ずびしっ、と音が聞こえてきそうなほど強く指を差されて愕然とする。なにを言い出すんだこいつは。なんでこういう時だけ乗っちゃうのバカ! 「私は寒いから…」 「え…一緒に遊んでくれないの?」 断ろうとした途端に向けられたりんちゃんの寂しそうな顔が胸にぐさっと刺さった気がした。痛い…こんな純粋な目で見られて、断れるわけがない。 観念した私はぐっと息を飲んで雪合戦を引き受けることにした。強気に笑んでいる邪見、お前だけは絶対にコテンパンにしてやるからな。 「――じゃあいくよー。よーい、始めっ」 ふっかふかの新雪に立った私と邪見がりんちゃんの声に合わせて思いっきり雪玉を投げつけあった。なぜ言い出しっぺのりんちゃんが審判で参加していないのか疑問だけど、とにかく勝負を吹っ掛けられたからには負けていられない。特に邪見なんかには。 「ふはは!効かぬわそんなへなちょこ球~へぶっ!」 「なにが効かないって~?」 「きっ貴様…これでも喰らえ!」 「ふん、邪見こそコントロールがなってないんじゃないの!?」 「こんとろーるってなんじゃい!」 私が邪見にぶつけまくる中、邪見の球は私の横をいくつも過ぎ去って行く。よくもまあこんなノーコンで私に勝負を挑んできたもんだ。 これならすぐに勝負をつけられそうだし、殺生丸さまが帰って来る前にさっさと片付けてやる。 「これで…終わり!!」 渾身の力で思いっきり振りかぶった球を勢いよく投げつける。けれど力みすぎてしまったのかその球は邪見を外れて向こうに飛んで行ってしまった。 大事なところで外したー!なんて思いが浮かんだ直後、その球がぼすっという音を立ててなにかにぶち当たった。なにかっていうかあれ…殺生丸さまでは……? 「……貴様ら……」 「「ひえっっ!?」」 ずるりと雪が殺生丸さまの頭から落ちる中、とんでもなく鋭い瞳を向けられて思わず邪見と抱き合って震えあがってしまった。 なんでこんなタイミングで帰って来られたのですか。そりゃ流れ弾飛んでっちゃいますよ。とは言えるはずもなく、無言で歩み寄って来る殺生丸さまを見つめたままがたがた震えていた。 「あの、殺生丸さま、これはですね…」 「言い訳は聞かぬわ」 そう言った殺生丸さまはがっし、と私の首を掴み込んだ。つっ、冷たあ!? 「うあああ冷たいですごめんなさいほっほんとそれだけはああっ」 「ふんっ、ざまをみろ!殺生丸さまにコテンパンにされてしまうが良いわ!」 「邪見、貴様もだ」 「へっ!?」 私が悶絶しているのをバカにしてきた邪見がげしっと雪の中に蹴り飛ばされた。ざまーみろ!私はなんとか慣れて来たからもう大丈夫…… 「余裕そうだな?」 「ひぎゃ!?せ、背中、は…っ」 びくぅっと跳ねた体を硬直させる。あろうことか殺生丸さまは私の首が冷たさに慣れたことを悟って背中の方に入れ込んで来たのだ。 もはやそこまで突っ込まれたら声を上げるのもままならないくらい悶絶してしまって、ただただ声にならない息を漏らしながら縋るような目をりんちゃんに向けていた。 「り、りんちゃ…見てないで、助けて…っ」 「りん、なにも見てないよ」 「は、薄情な子っっ」 目を隠してまさかの知らん顔するりんちゃんに愕然とすればついに殺生丸さまの手が引き抜かれた。ようやく終わった…。 はああ、と大きなため息をこぼしてもう一度謝っておこうとしたら殺生丸さまが手を見つめられていることに気付いた。また突っ込もうとしてるのかも。 「もうあったまったでしょう。同じ手は使えませんからね」 「そうだな…」 念を押すように言えば殺生丸さまは素直に手を下ろした。よかった。これで助かった…早く洞窟に戻って焚火であったまろう。 …と思えば、去ろうとする私のパーカーのフードをむんずっと掴み込まれてしまった。 「次はこっちの手だ」 「も…もう勘弁してください!!」

- - - - - - という衝動書きでした。 殺生丸さまが雪玉に当たってしまったのはきっと考えごとかなにかで上の空だったんでしょうね。そうじゃなかったら消し飛ばされるもしくは打ち返されそうです。 2018.01.23:memoにて掲載。

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