君との日常

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「#name#ーっ」 夕食の支度をしているとお風呂場から私を呼ぶ声が響く。 私は手を軽く水で流すように洗うと、すぐさま声の主の下へと駆けて行った。 「蛮骨ってば、もう出たのっ?」 「ああ!早く#name#に髪乾かしてほしいからな!…あ!ちゃんときれいに洗ったから誤解するなよ!?」 「分かってるよー」 慌てたように弁解する蛮骨の姿がおかしくてつい笑ってしまう。 ふと見てみればガシガシと頭を拭く蛮骨の姿はパンツ1枚。 もう、と思いながらもくすりと笑って蛮骨からバスタオルを受け取った。 彼の広い背中に残る水滴をぽんぽんと軽く叩くように拭っていると「ふふーん」と楽しげな声が聞こえてくる。 「どうしたの?」 「いやーやっぱりおれ、#name#にしてもらうの好きだなーって思ってよ」 「そう?背中流す時も言ってくれたらしてあげたのに」 「んー、#name#がまだ飯の準備でバタバタしてたからな」 「気にしなくてもいいのに…ありがと」 バスタオルをふわりと被せて蛮骨の頭を後ろからぎゅっと抱きしめる。 すると蛮骨は照れ臭そうに笑ったのち、私の腕をつんつんとつついて来た。 「#name#、かーみっ」 「ふふっ、はいはい」 バスタオルを被せたままの頭を数回わしわしと数回まさぐるとバスタオルを取り払ってカゴに落とし入れた。 そしてドライヤーと櫛を取り出し、コンセントを挿し込む。 カチっと電源を入れて蛮骨の長くてきれいな髪に温風を当て、静かに髪を梳く。 蛮骨の髪、本当にきれいだなあ。 「女の私よりもきれいなんじゃない、髪の毛」 「そうか?おれは自分の髪より、#name#の髪の方が好きだけどな」 「えー私のなんていいものじゃないよ?」 「ばーか、#name#のだからいいんだろー」 そう言うと蛮骨は楽しそうに笑う。 それが何だかとっても幸せそうに見えて、私自身、すごく幸せな気分だった。 他愛のない話をしている間に蛮骨の髪が乾いたようで、濡れた時とはまた違う良さがそこにはあって。 手でするりとなぞるように梳くと、ドライヤーの温風の温かさが残っていて心地いい。 すると蛮骨が振り返りながら立ち上がった。 私の手から蛮骨の髪が流れるようにさらりと落ちる。 「ほら、#name#も風呂入れって」 「んー…まだ晩ごはんの用意が残ってるし、私はあとで入るよ」 「いいっていいって!残りはおれがやっとくから」 キッチンへ戻ろうと体を傾けたのに、蛮骨に無理やり押されて戻されてしまう。 「な?」と言わんばかりの笑顔を見せてきて私は簡単に折れてしまった。 晩ごはんの用意ももうほんとに少しだし、きっと任せても大丈夫かな。 じゃあお願い、と微笑み返すと蛮骨は満面の笑みで親指を立てて見せた。 「#name#も出たら呼べよ?今度はおれが乾かしてやる番だからな!」 「うん、それもお願いねっ」 このあと蛮骨が焦げ臭い匂いと共に浴室に飛んできたのは、また別のお話。 end.

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