◆ 気遣いが上手い彼
蛮骨と付き合い初めて、ようやく1週間ぐらいの時間が経った。
けれど彼が積極的であるのに、恥ずかしくて1度も手を繋げていない。
そんな私に呆れるかと思ったら蛮骨はすごく優しくて、いつも「無理しなくていいぜ」って言ってくれる。
けれど、手ぐらいは繋げないとダメかな…と思う。
私はそんな考えに耽りながら、戦国時代と現代を繋ぐ骨喰いの井戸を通り抜けた。
蛮骨はいつもそこで待ってくれる。
今日も彼は井戸の縁に腰掛けていて、私が来たって分かるといつも通り手を伸ばしてくれた。
どうにか上がって蛮骨の手を取ると私の体は一気に引き上げられる。
「遅えぞ#name#ー」
「ごめんね、ちょっと荷物がまとまらなくて…」
苦笑しながら大きく膨らむリュックを見せる。
すると蛮骨は目をぱちくりと見開いて驚く、けれどすぐにぷっと吹き出した。
「いくら何でも多すぎだろっ」
「だって持って来たい物が多かったんだもん」
「だからって…これは重いだろ」
笑いながらそう言われて、私は小さく「うん…」と頷いた。
蛮骨は一層笑ってたけれど、ぽんぽんと私の頭を撫でてくれて。
いつものように「可愛い奴」と言ってくれた。
嬉しいんだけど、やっぱりどこか恥ずかしくて…私はつい俯いてしまう。
そんな時、いきなりリュックの取っ手を掴まれてそのままぐいっと引っ張られた。
「ば、蛮骨っ?」
「これ重いんだろ?だったら俺が持ってやるよ」
爽やかに笑顔を見せながらそう言って来る。
やっぱり優しいなって思ったけれど、さすがに荷物を持たせるのは悪い気がしてリュックから手が離せなかった。
「これぐらい平気だよ…!」
「いや、女に力仕事は似合わねえ。これは俺が持つ!」
私から奪うように取り上げると、蛮骨は平然と重いはずのリュックを担ぎ込んだ。
そして「行こうぜ」と歩き出す彼の背を、私は慌てて追い掛けて横に並ぶ。
いつも荷物を持ってもらってることに気が引けて来て、私はまたリュックを取り返そうと手を伸ばした。
すると、その手がいきなり彼に掴まれてしまう。
「そんなに荷物持ちたいなら、俺でも持ってろよ」
手のひらを重ね合わせて握り締められる。
いきなりだったのと、初めて手を繋いだと言うことに私は戸惑って。
何も言えなくなってつい離してしまいそうになったけれど、私は黙って歩き出した。
蛮骨の手と自分の手を離さないように強く繋ぎながら。
end.
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