過ぎた制限時間
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私には好きな人がいる。 いつも折り鶴を作ってくれたり、話相手になってくれたりしてすごく優しい人。 そう、私は白夜が好き。 そんな片想いを抱きながらいつものように白夜の隣にいる。 現代から来ている私は、毎回現代の物をネタに白夜と話を弾ませていた。 「今日は4月1日、エイプリルフールなんだよ」 「えいぷ…り、る?どう言うことだ?」 「エイプリルフールって言うのは、嘘をついてもいい日って言えば分かるかな?」 「へー、そうなのか。…でも、もうすぐそれも終わるな」 白夜がそう言いながら外を見る。 襖の隙間に見えるのは、もう真っ暗で月が煌々と光る空。 私はふと携帯を取り出して画面を見てみた。 携帯に表示されているのは『4/1 23:52』という数字。 そういえば、エイプリルフールだと分かっていたのに全然嘘をついてなかった。 「どうせならあと8分間、嘘つきまくろうよっ」 「それもいいが…#name#、それ言ったら嘘だってすぐ分かるだろ?」 「……あ」 しまった! ついやっちゃったよ…! 唖然とする私を見て、白夜はくすくす笑ってる。 笑顔は好きだけど、私が笑われてるのは気に食わないっ。 「笑うなー!」 「無理、#name#が面白すぎてっ…」 「うぅー…!」 完全に遊ばれてる。 ダメだ、このままじゃ私負けてる! 私も何か言い返してやろうとした途端、「そろそろかな…」と言う声と同時に白夜の人差し指で口元を押さえられた。 「実は俺、#name#のこと好きなんだ」 私の口元から指を離し、柔らかく微笑みながらそんなことを言う白夜。 いきなり何を言い出すやら、エイプリルフールにはありきたりなベタな台詞。 顔が熱くなったのも束の間で、白夜の嘘だって思うと凹んできた。 すると私の今の思いを察したのか、白夜が苦笑しながら私のポケットを指差した。 「今の時間、見てみな」 そう言われ、私は不思議に思いながらも取り出した携帯の画面を見る。 四角い液晶画面の真ん中辺りに表示された文字列。 時計の表示は、『4/2 0:00』。 end.