遊びと本気の違い
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「気に入った、俺の女になりな!」 そう言って彼は、私を住み処に住まわせるようになった。 戦で両親をなくしていた私はどこに住もうと気にはしていないんだけれど。 いきなりのことで当初は怯えていた。 でも数ヶ月住んでいたら、何となく慣れていって。 いつの間にか普通に過ごすようになっていた。 「#name#、帰ったぞ!」 「あっ、おかえ…り…」 飛天の声が聞こえて振り返ってみればその横には見知らぬ女の姿。 また飛天が連れ帰って来たんだ。 飛天はいつもこう。 私にあんなこと言って住まわせておきながら、平気で違う女の人連れてくる。 「ねー、この女何ー?まさか彼女なんて言わないわよねえ?」 「バーカ、こいつは俺の女じゃねーよ。満天の女だ」 (はぁあっ!?) そう言いながら飛天は女を連れて別の部屋へと向かった。 いつも私のことを雇った奴だとか、ただの世話係だとか言うけど…満天の女あ!? 今まではまだ許せたけど、今回は本当に許せないっ…! 「#name#?何ふてくされてやがんだ」 女がいなくなって飛天は私の元に来るけれど、返事なんてしてやんない。 自業自得だもん。 それに気付くまでは絶対に無視してやる。 「おい#name#。何かあったんか?」 何で分かんないの!? 自分で気付きなさいよ! 横に座られて顔を覗き込まれるけれどすぐに顔を背ける。 「……おめーなあ…」 声が少し低くなったかと思えば、いきなり首元に腕を回されて引き寄せられる。 やばい、怒らせたかも。 どきっとしながらも私は飛天を見つめた。 「何で無視しやがる」 「……飛天が悪いんだよ…」 激怒とまではいかないが飛天の恐ろしい剣幕に負け、私は口を割ってしまった。 私の言葉を聞いた飛天は怪訝な顔をする。 「俺が何をしたんだよ」 「私がいるのに、いつも違う女の人連れて来て…私は飛天の女じゃなかったの?」 「何だ。そんなこと気にしてたんか」 「そんなことって…私は──」 言葉の途中で飛天は私を抱き締めた。 後ろから抱かれる形で、飛天が頭を私の肩に乗せるようにする。 「あんな女共、ただの遊びだってのが分からねーのか」 「遊び…?で、でも…」 「俺が本気で好きなのは#name#だけだ。だから指一本も食わずに生かしてんだろ」 …そうだ。 飛天に言われるまで気付かなかったけど、私は一度も手を出されていない。 やっとそれに気付いた私が嬉しさと申し訳なさの混じった笑みを向けると、飛天は「バカだな」なんて言いながらも笑みを見せてくれた。 end.