秘めていた想い

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#name#が七人隊に入隊してから1年ほどは経っただろうか。 今の#name#はすっかり皆と馴染んでいて、蛮骨とは特に仲がよかった。 2人でどこかへ出掛けたり、2人で楽しげに話していたり。 そんな姿を、いつもいつも影から見つめていた。 (なっさけねー…) 蛇骨は自身のもどかしさや勇気のなさを憐れんでいた。 今日も縁側で楽しげに話す#name#を見ているだけ。 話に入って不快に思われそうなのが嫌で怖くて、いつも離れた場所にいる。 ──いつ頃からだろう。 最初は当たり前のように女である#name#を嫌っていたのに、いつしか惹かれるようになっていたのだ。 #name#をもっと傍で見ていたい。 どうせなら、#name#に触れていたい。 (でも大兄貴がいるしな…) #name#の横で笑う蛮骨の姿を見て、蛇骨は思わずため息をこぼしてしまう。 "大兄貴には敵わない" そんな思いが蛇骨の脳裏に焼き付いていて。 最早どうしようも出来なかった。 ──そんなある日。 蛇骨はふらりと屋敷内を歩いていて#name#の声を耳にした。 そこの角を曲がった所だろう。 そう分かった途端に、蛇骨は自然と壁に寄り掛かって会話を聞いていた。 「お願い蛮骨!蛮骨しかいないのっ」 「…仕方ねえなあ。そこまで言うんなら#name#と付き合ってやるよ」 (──!) #name#と大兄貴が…付き合う? 聞こえてきたその会話内容は思いもよらないもので。 そっと覗き見た#name#の笑顔を見た途端に、疑いは確信へと変わった。 (#name#が…大兄貴と…) ぐるぐると脳内を渦巻く衝撃。 蛇骨は呆然としながら自室に戻って行った。 自分がぐずぐずしてたから#name#を取られた。 …いや違う。 #name#は元々大兄貴と仲がよかった。 だからいつ付き合い始めてもおかしくなかったんだ。 俺がぐずだからじゃない。 あの2人の仲がよかったから。 そんな思いが胸中を埋め尽くし、蛇骨は力なく横たわった。 「蛇骨…蛇骨っ」 「!」 #name#の声が聞こえて目を覚ますと、#name#はすぐ傍に座っていた。 どうやら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。 上体を起こして#name#と向かい合った蛇骨は、気まずそうにしながら口を開いた。 「な…何か用でもあんの…?」 「あ、あのねっ、わっ…私、蛇骨に聞いて欲しいことがあるのっ…!」 「聞いて欲しいこと?」 ああ、大兄貴と付き合うことか…そんなのわざわざ言いに来んなっつーの。 胸中でそんなぼやきを発しつつ、蛇骨は後頭部を掻きながら素直に耳を貸した。 すると#name#は躊躇いを見せながらも言葉を紡いでいく。 「あの…私っじ、蛇骨のことがす…好きっ…!」 顔を真っ赤にした#name#が言い放った言葉。 それを聞いた蛇骨はぴたりと体を固くした。 「…は?#name#は大兄貴が好きなんだろ…?」 「え…?な、何で…?」 「だってお前、さっき大兄貴に告ってたんじゃ…」 唐突すぎる展開に、蛇骨は拍子抜けしたような表情で#name#を指差す。 対する#name#はきょとんとしていて、蛇骨の言葉を全く理解していない様子だった。 「もしかして…どう告白すればいいのかっていう相談に付き合うって言ってたこと?」 その言葉を聞いた途端、蛇骨は嘘だろ…とでも言うように肩を落とした。 まさかそう言う意味での"付き合う"だとは、一度も考えていなくて。 溜め込んでいたもやを思いっきり吐き出すかのように、大きな溜め息を吐き片手で顔を覆った。 「そう言うことだったのかよ…。俺1人で悩んでたなんてかっこわりー…」 「な、何で悩むの?」 「それは…、あーもうっ! お、俺も#name#が好きで、付き合って欲しかったんだっつーの!」 「!」 やけくそになったように言葉を投げ掛けると#name#は驚いていた。 驚いた表情から次第に変わり、ぽろぽろと涙を溢し始めて。 涙を拭うと、#name#は満面の笑みで"大好き"と言った。 end.

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