◆ また君の傍に
所詮戦国時代。
医療なんて全然発達していないこの時代では、一度重い病気に掛かると死を覚悟しなければならなかった。
果てしなく広がる青い空。
向こう側がほんのりと赤みがかってるから、時計なんて見なくても大体の時刻は分かる。
そんな他愛のないことを考えている私は現在、村で流行っているたちの悪い病気に侵されていた。
体が重くて動きづらい。
息をするのも苦しいくらい。
生きてる方が地獄なんじゃないかと思うほどに辛かった。
そんな私をいつも傍に置いてくれていた殺生丸は、最近悲しそうな目を私に向けてくる。
仕方ないよね。
だって私、そろそろ死んじゃうんだから。
「ねえ…殺生丸…?」
「何だ…」
「私が死んじゃったら…殺生丸はどうする…?」
「またそれか…」
目を伏せて小さくため息をこぼす殺生丸。
ごめんね。
やっぱりこんな状況に置かれると、同じことを何度も聞いてしまうの。
だから殺生丸が何て答えるのか、もう私は分かってる。
「「#name#を死なせはしない」」
ほらね。
決まってこの言葉を言う。
でも無理なの。
私は病気に侵されているんだから。
殺生丸が今何をしたって、この病気は治らない。
この時代の名医って言われる医者に看てもらったけど、もう今日でこの命とはさようなら。
今更現代に戻ったって手遅れなの。
それに私は…過去に天生牙で命を吹き返させてもらった身。
もう死ねばそこで終わり。
自分自身が情けなく感じて来た私は、鉛のように重い腕を殺生丸の方へ、空の方へ向けた。
「最期にお願い…聞いてくれる…?」
「……、聞こう…」
私が言った"最期"と言う言葉が気にくわないのか、ほんの少し怪訝な顔をした。
それでも私の要求を聞こうとする殺生丸はすごく優しいと思う。
「最期に…抱きしめて、欲しいの…」
ああ、本当に息苦しくなってきた。
喉の辺りで息が詰まる。
呼吸の仕方を忘れてしまいそう。
「#name#…」
掠れてきた私の視界に、苦痛に歪めた彼の顔が映った。
そんな顔しないでよ。
殺生丸らしくないじゃない。
そんな言葉の代わりに小さく苦笑して見せると、私の体は強い力で抱きしめられた。
苦しいはずなのに、心地いい。
「#name#…」
「殺…生、丸…」
暗くなっていく視界。
遠ざかる私の意識。
記憶が走馬灯のように段々と見えてくる。
「あり…がとう…」
「#name#…」
「さよな、ら…殺生、丸…」
温度が下がる私から、一筋の熱い涙が滲み出た。
私、殺生丸に愛されて幸せだった。
色んなことが出来て、楽しかった。
殺生丸に出会えて、嬉しかった。
「…大好き……」
さようなら、私が愛した日々。
生まれ変われたら、また君の傍にいたいな。
end.
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