◆ 夢にまで見た恋だった
ありふれた普通の村。
私はその村の何ら変わりないただの娘だった。
でも他とは違うことが1つだけ…。
隣近所の女の子たちとは違うことが1つだけあった。
──恋をしたことがない。
私の周りの女の子たちはみんな、この村の男の人や外の村の男の人を好きになっていく。
家事が終わるとよくみんなで集まって話をする。
けれど私はいつもついて行けない。
馬鹿にされたこともあるし、応援されたこともある。
恋をしてみたいけれど、私が好きになる人なんてこの辺には全然見当たらなかった。
「東の村のヒトがすごく格好よかったの!それにとーっても優しかったのよーっ」
「あたいの好きな人の方が格好いいわ!」
「どっちも見てみたいわあっ。ね、#name#!」
「…うん、そうだね」
今日もまた集まって話をする。
私はそこで愛想笑いを振り撒いて相槌を打つだけ。
私は喋れない…ついて行けないもの。
つまらない…雨でも降って、この話終わっちゃわないかな…。
ふと空を仰ぎ見ると、何かがこちらに近づいて来るのが見えて。
何だろうと目を凝らしていると、隣家のおじさんが大声を上げた。
「妖怪だ!!」
妖怪…!?
よく見ると、近付いて来るそれは本当に妖怪で。
それも1匹や2匹ではなく、多数の妖怪がいた。
村のみんなが慌てて武器や農具を構える。
──けれど、相手は妖怪。
相打ちの人もいれば、やられる人も多数いて…私は立ち竦んでしまった。
その瞬間を妖怪に見られてしまい、1匹の妖怪が私の方へ向かって来る。
やだっ…やられる──!!
「はッ!」
肉が斬れるような嫌な音が響く。
そして辺りでぼとぼとと何かが落ちる音が聞こえて、私はゆっくり目を開いた。
すると目の前にはもう妖怪はいなくて。
鎖鎌を持った男の子が、私の前に立っていた。
「君、大丈夫?」
「え…あっはい、大丈夫です…!」
「よかった」
にこ、とはにかむ男の子。
もしかして…この人が私を助けてくれたの?
辺りを見ると、男の子と同じような服を来た人たちが妖怪を退治してくれている。
「妖怪はおれたちが片付けるから、どこか安全な場所に隠れてて」
「は…はい」
言われた通り、小屋の中に身を隠していると段々と騒ぎが小さくなって。
ようやく静かになった頃、小屋から出るともう妖怪たちは跡形もなく片付いている。
あの男の子が言った通りだった。
傷を負った村の人の手当てをしている人たちの中に、あの男の子がいるのを見つけた。
「あ、あのっ…」
「ん?」
「私、#name#って言います…さ、さっきは…ありがとうございました…!」
「ううん、当然のことをしたまでだよ。おれたちは退治屋だからね」
また柔らかく微笑んでくれた。
とても優しい、暖かな微笑み…。
この人を見てると、すごく温かくなる。
「あ、あなたの名前──」
「琥珀ーっ、もう行くよー!」
「あ、はーい!ごめん#name#さん、もう戻らないと…じゃあっ」
先に行く退治屋さんたちの方へ、私に手を振りながら走って行く。
琥珀、くん…。
彼のことを思うと、何だか胸が高鳴る。
もっと見ていたい、もっと話したい。
またいつか、会えるかな…。
end.
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