七夕騒ぎ
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「えっへへー」 「何にやにやしてやがんだよ#name#」 「犬夜叉知らないの?今日は七夕でね、夜空にいっぱい星が見られるんだよ!」 「七夕あ?」 ──今日は7月7日。 織姫と彦星が会うことを許された唯一の1日。 幸い、織姫と彦星が流す涙って伝わる"洒涙雨"も降ってないし。 よく晴れた今日なら、きっと天の川が見れるはず! 「犬夜叉、笹取って来てよ」 「はあ?何でおれが笹なんか…」 「願いを叶えるためっ!」 「……」 私が両手でガッツポーズをすると、急に犬夜叉が黙り込んだ。 何と言うか、"哀れ"という目で見て来ている。 なんて失礼な奴なんだこの犬。 「どうせお前…星なんかどうでもよくて、願い叶えるのが目的なんだろ」 「ぎくり」 「…アホらし」 そう言うと、犬夜叉はいつものように寝転んで。 思いっ切り私に"興味がありません"の意を見せつけて来た。 腹が立ったので、犬夜叉の耳にそっと近づく。 「あんたには夢がないのかーっ!」 「うるせーっ!耳元で大声出すんじゃねえ!」 半泣きの目で耳元を押さえながら私に食い掛る犬夜叉。 馬鹿だな。 これは私の気配を感じ取らなかった犬夜叉が悪い。 私はドヤ顔で犬夜叉を見てやる。 すると何を思い立ったのか、急にどこかへ走って行ってしまった。 「ふんッ!」 ドザアッ!と凄まじい音を立てて、私の3センチほど目の前に何かを突き立てられた。 こ、これはっ…! パンダが愛してやまない笹じゃないですか! 何だかんだ言って、結局持って来てくれるんじゃないっ。 「ありがとねー犬夜叉っ。…さてと、願いごと書かないと──っあ!」 私がいそいそと短冊とペンを取り出すと、犬夜叉がそれを横から奪い取りやがった。 馬鹿犬め!それは餌じゃないっ! それに、ペンがどんな物かも知らないくせに! 「返して!」 「けっ、おめーの代わりにおれが願いごと書いてやるよ」 「いやいやいや!あんた絶対まともなこと書かないし!って、あぁーっ…!」 私の必死の抵抗は無に終わり、犬夜叉は不慣れな手付きで短冊に何かを書き始めた。 しばらく経つと、どうやら書き終ったらしく。 犬夜叉は短冊の穴に紐を通し、適当に笹に括りつけた。 「どんなもんでいっ」 「何々ー?…『ばかな#name#がおれの言うことを聞きますように』…って何これ!?」 「おれの1つ目の願い」 「他にもあるの!?」 私よりよっぽど現金な奴じゃない! そこで私は我に返り、残りの短冊を取られるより早く、願いごとを書き始めた。 「これでよしっ!」 すぐさま私は紐を通し、笹に括りつけた。 すると犬夜叉は、餌に誘き寄せられた魚のように近付いて来た。 見るがいい…私の願いごとを! 「なっ…!て、てめえっよくもこんなこと書きやがったなっ!」 「あんただって私について変なこと書いたじゃん」 「だからって普通『馬鹿な犬夜叉が早く子供っぽさを卒業出来ますように』なんて書くかよ!」 「書く!」 「この野郎…!」 またもドヤ顔で見てやる私。 でも私って優しくない? ちゃんと犬夜叉が大人になれるように願ってあげてるんだよ? 自分の願いも書かないで…私いい子、超いい子…! 「どこがいい子だどこが」 おっと心の声が口に出ていたらしい。 気を付けないとまた馬鹿夜叉にうるさく言われちゃう。 ほんと言い出したらうるさいからなー「聞こえてっぞ」…うん、私は何も知らない、聞いてない。 「…って!あんた何やってんの!」 「次の願いごと書くに決ってんだろ」 「もうやめて…!あんたの馬鹿な願いごとは叶えられないってお星さまが嘆いてる…!」 「嘘だな。お前が星の声なんて聞けるわけねえ」 「この野郎っ…もういい!私も書いてやるからっ」 残りの短冊を何枚かかすめ取り、犬夜叉に負けじとペンを走らせた。 するとそれを見た犬夜叉も「負けてられっか!」とか言いながら次々に書いて行く。 笹には大量の短冊。 すでに私たちの手元には1枚も短冊が残っていなかった。 残りは全て、私と犬夜叉で奪い合ったりしたせいでなくなっている。 中には破れちゃったのが何枚かあるけど…無残な破れ方だから使えない。 すると急に犬夜叉が声を上げる。 「てめえ…また変なことばっかりっ!」 「犬夜叉だって変なのばっかじゃない!何よこれ!」 一枚の短冊を掴んでひらひらさせる。 そこには『#name#は鬼』と書いてあった。 最早願いごとじゃない! 言いたいこと書いてるだけじゃんっ! 「お前だってこんなこと書いてるじゃねえか!」 犬夜叉が手に取った1枚の短冊。 それは私の字で『犬夜叉は馬鹿でアホでただのガキ』と書いてある。 おっかしーなー。 私そんなこと書いた覚えないんだけどなー。 知ーらなーい☆ 「しらばっくれんなっ!」 「しまった、また声に出てた!」 「へっ、馬鹿はおめーじゃねえか馬鹿#name#っ!」 「何だと犬っころっ!」 「言いやがったなてめえ!」 「おすわりおすわりおすわりおすわり!!」 「ぐぁぁぁあっ!!」 「ねぇ法師さま」 「何ですか珊瑚」 「あの2人を静かにさせるって願っちゃダメかな」 「いいでしょう。お星さまもきっと喜んで叶えてくれますよ」 「…仕方がない。おらが短冊を取って来てやろう」 end.