◆ 七夕騒ぎ
「えっへへー」
「何にやにやしてやがんだよ#name#」
「犬夜叉知らないの?今日は七夕でね、夜空にいっぱい星が見られるんだよ!」
「七夕あ?」
──今日は7月7日。
織姫と彦星が会うことを許された唯一の1日。
幸い、織姫と彦星が流す涙って伝わる"洒涙雨"も降ってないし。
よく晴れた今日なら、きっと天の川が見れるはず!
「犬夜叉、笹取って来てよ」
「はあ?何でおれが笹なんか…」
「願いを叶えるためっ!」
「……」
私が両手でガッツポーズをすると、急に犬夜叉が黙り込んだ。
何と言うか、"哀れ"という目で見て来ている。
なんて失礼な奴なんだこの犬。
「どうせお前…星なんかどうでもよくて、願い叶えるのが目的なんだろ」
「ぎくり」
「…アホらし」
そう言うと、犬夜叉はいつものように寝転んで。
思いっ切り私に"興味がありません"の意を見せつけて来た。
腹が立ったので、犬夜叉の耳にそっと近づく。
「あんたには夢がないのかーっ!」
「うるせーっ!耳元で大声出すんじゃねえ!」
半泣きの目で耳元を押さえながら私に食い掛る犬夜叉。
馬鹿だな。
これは私の気配を感じ取らなかった犬夜叉が悪い。
私はドヤ顔で犬夜叉を見てやる。
すると何を思い立ったのか、急にどこかへ走って行ってしまった。
「ふんッ!」
ドザアッ!と凄まじい音を立てて、私の3センチほど目の前に何かを突き立てられた。
こ、これはっ…!
パンダが愛してやまない笹じゃないですか!
何だかんだ言って、結局持って来てくれるんじゃないっ。
「ありがとねー犬夜叉っ。…さてと、願いごと書かないと──っあ!」
私がいそいそと短冊とペンを取り出すと、犬夜叉がそれを横から奪い取りやがった。
馬鹿犬め!それは餌じゃないっ!
それに、ペンがどんな物かも知らないくせに!
「返して!」
「けっ、おめーの代わりにおれが願いごと書いてやるよ」
「いやいやいや!あんた絶対まともなこと書かないし!って、あぁーっ…!」
私の必死の抵抗は無に終わり、犬夜叉は不慣れな手付きで短冊に何かを書き始めた。
しばらく経つと、どうやら書き終ったらしく。
犬夜叉は短冊の穴に紐を通し、適当に笹に括りつけた。
「どんなもんでいっ」
「何々ー?…『ばかな#name#がおれの言うことを聞きますように』…って何これ!?」
「おれの1つ目の願い」
「他にもあるの!?」
私よりよっぽど現金な奴じゃない!
そこで私は我に返り、残りの短冊を取られるより早く、願いごとを書き始めた。
「これでよしっ!」
すぐさま私は紐を通し、笹に括りつけた。
すると犬夜叉は、餌に誘き寄せられた魚のように近付いて来た。
見るがいい…私の願いごとを!
「なっ…!て、てめえっよくもこんなこと書きやがったなっ!」
「あんただって私について変なこと書いたじゃん」
「だからって普通『馬鹿な犬夜叉が早く子供っぽさを卒業出来ますように』なんて書くかよ!」
「書く!」
「この野郎…!」
またもドヤ顔で見てやる私。
でも私って優しくない?
ちゃんと犬夜叉が大人になれるように願ってあげてるんだよ?
自分の願いも書かないで…私いい子、超いい子…!
「どこがいい子だどこが」
おっと心の声が口に出ていたらしい。
気を付けないとまた馬鹿夜叉にうるさく言われちゃう。
ほんと言い出したらうるさいからなー「聞こえてっぞ」…うん、私は何も知らない、聞いてない。
「…って!あんた何やってんの!」
「次の願いごと書くに決ってんだろ」
「もうやめて…!あんたの馬鹿な願いごとは叶えられないってお星さまが嘆いてる…!」
「嘘だな。お前が星の声なんて聞けるわけねえ」
「この野郎っ…もういい!私も書いてやるからっ」
残りの短冊を何枚かかすめ取り、犬夜叉に負けじとペンを走らせた。
するとそれを見た犬夜叉も「負けてられっか!」とか言いながら次々に書いて行く。
笹には大量の短冊。
すでに私たちの手元には1枚も短冊が残っていなかった。
残りは全て、私と犬夜叉で奪い合ったりしたせいでなくなっている。
中には破れちゃったのが何枚かあるけど…無残な破れ方だから使えない。
すると急に犬夜叉が声を上げる。
「てめえ…また変なことばっかりっ!」
「犬夜叉だって変なのばっかじゃない!何よこれ!」
一枚の短冊を掴んでひらひらさせる。
そこには『#name#は鬼』と書いてあった。
最早願いごとじゃない!
言いたいこと書いてるだけじゃんっ!
「お前だってこんなこと書いてるじゃねえか!」
犬夜叉が手に取った1枚の短冊。
それは私の字で『犬夜叉は馬鹿でアホでただのガキ』と書いてある。
おっかしーなー。
私そんなこと書いた覚えないんだけどなー。
知ーらなーい☆
「しらばっくれんなっ!」
「しまった、また声に出てた!」
「へっ、馬鹿はおめーじゃねえか馬鹿#name#っ!」
「何だと犬っころっ!」
「言いやがったなてめえ!」
「おすわりおすわりおすわりおすわり!!」
「ぐぁぁぁあっ!!」
「ねぇ法師さま」
「何ですか珊瑚」
「あの2人を静かにさせるって願っちゃダメかな」
「いいでしょう。お星さまもきっと喜んで叶えてくれますよ」
「…仕方がない。おらが短冊を取って来てやろう」
end.
back