◆ 貴方から逃げられない
「ぜってえ俺から離れるな」
聞き飽きた言葉。
毎日同じように繰り返される。
私はその言葉に決まって、
「分かってる」
そう答える。
いつもと同じように。
蛇骨と私は1ヶ月ぐらい前から付き合い始めた。
告白したのは蛇骨の方からで。
その時の私は嬉しさのあまり、すぐに「はい」と答えてしまった。
今となっては、それを後悔する。
蛇骨は付き合い始めたその日から、束縛するような態度を見せてきたのだ。
「なぁ、ほんっとーに愛してる?」
「愛してる。大好き。一体何度言えばいいの?」
「ん~、俺か#name#が死ぬまでずーっと」
「じゃあ今すぐ死なせて」
大きなため息をこぼした。
すると蛇骨は決まってニヤリと笑う。
「いーや。絶対に死なせねーから」
「何それ。だったら蛇骨が死ぬまで私、好きって言い続けるの?」
「そういうこと」
殴ってやろうかこいつ。
少しだけイラッときたけど、温厚な私はそれを抑えることにした。
そんな時、「そうだ」と思い出したように、蛇骨は言い始めた。
「俺以外の男に近付くなよ」
「何で?私にも男友達ぐらいいるんですけど」
「じゃあ、そいつ殺すか」
「…あんたを殺すよ…」
物騒なことを言う蛇骨に聞こえないよう、小さく呟く。
すると案の定、蛇骨には聞こえていなかったよう。
そこでふと、疑問に思ったことが頭に浮かんできた。
「なら蛮骨はどうなの?蛮骨も男だよ?」
「#name#が大兄貴に色気付いたら、#name#を監禁しよっかなー」
「誰が色気付くか!」
呆れる。
何でこんなことを普通に考えられるのだろう。
それでも、私はこの蛇骨を静めることができる。
「あのさ、あんまりしつこいと縁切っちゃうよ?」
最近気付いた。
この言葉で蛇骨は静まる。
──はずなのに。
何故だか蛇骨はニヤリと口角を吊り上げ、悪戯っぽく笑った。
急に顔を近づけられ、私は思わず目を瞑った。
「そんなこと出来るわけねーだろ?#name#は一生、俺から離れられねーんだからよ…」
「───…!」
耳に吐息が掛かるぐらいの距離で言われ、私の体は強ばった。
それを見て、妖しく笑う蛇骨。
私が固まっていると、蛇骨は顔を私の首元に埋めた。
「っん…!」
「俺のものって印、な」
ちゅ、と唇を離された場所に、小さな赤い花。
それは私の髪で隠れる位置にあるのだけど、はっきりと見えて。
妖しく笑う彼からは、当分逃げられそうにないです。
end.
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