貴方から逃げられない
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「ぜってえ俺から離れるな」 聞き飽きた言葉。 毎日同じように繰り返される。 私はその言葉に決まって、 「分かってる」 そう答える。 いつもと同じように。 蛇骨と私は1ヶ月ぐらい前から付き合い始めた。 告白したのは蛇骨の方からで。 その時の私は嬉しさのあまり、すぐに「はい」と答えてしまった。 今となっては、それを後悔する。 蛇骨は付き合い始めたその日から、束縛するような態度を見せてきたのだ。 「なぁ、ほんっとーに愛してる?」 「愛してる。大好き。一体何度言えばいいの?」 「ん~、俺か#name#が死ぬまでずーっと」 「じゃあ今すぐ死なせて」 大きなため息をこぼした。 すると蛇骨は決まってニヤリと笑う。 「いーや。絶対に死なせねーから」 「何それ。だったら蛇骨が死ぬまで私、好きって言い続けるの?」 「そういうこと」 殴ってやろうかこいつ。 少しだけイラッときたけど、温厚な私はそれを抑えることにした。 そんな時、「そうだ」と思い出したように、蛇骨は言い始めた。 「俺以外の男に近付くなよ」 「何で?私にも男友達ぐらいいるんですけど」 「じゃあ、そいつ殺すか」 「…あんたを殺すよ…」 物騒なことを言う蛇骨に聞こえないよう、小さく呟く。 すると案の定、蛇骨には聞こえていなかったよう。 そこでふと、疑問に思ったことが頭に浮かんできた。 「なら蛮骨はどうなの?蛮骨も男だよ?」 「#name#が大兄貴に色気付いたら、#name#を監禁しよっかなー」 「誰が色気付くか!」 呆れる。 何でこんなことを普通に考えられるのだろう。 それでも、私はこの蛇骨を静めることができる。 「あのさ、あんまりしつこいと縁切っちゃうよ?」 最近気付いた。 この言葉で蛇骨は静まる。 ──はずなのに。 何故だか蛇骨はニヤリと口角を吊り上げ、悪戯っぽく笑った。 急に顔を近づけられ、私は思わず目を瞑った。 「そんなこと出来るわけねーだろ?#name#は一生、俺から離れられねーんだからよ…」 「───…!」 耳に吐息が掛かるぐらいの距離で言われ、私の体は強ばった。 それを見て、妖しく笑う蛇骨。 私が固まっていると、蛇骨は顔を私の首元に埋めた。 「っん…!」 「俺のものって印、な」 ちゅ、と唇を離された場所に、小さな赤い花。 それは私の髪で隠れる位置にあるのだけど、はっきりと見えて。 妖しく笑う彼からは、当分逃げられそうにないです。 end.