決着なんて着きません
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「おい殺生丸。その手離しやがれ」 「貴様こそ降参してはどうだ?そろそろ腕が疲れたであろう」 「けっ!このぐらいで疲れるほど弱くはねえんでなっ!」 「痛い痛い!少しは手加減してよーっ!」 #name#を挟み、片方ずつ腕を引っ張り合う犬夜叉と殺生丸。 引っ張りダコ状態の#name#は悲鳴を上げていた。 こうなったのも、さかのぼること数分前── ──いつものように#name#は犬夜叉たちと一緒に旅をしていた。 そんな時、かごめが休憩しようと言いだして。 一行はその場に座り込んだ。 「みんな体力あるわねー」 「そう?全然平気だけど…」 「そう言えば#name#ちゃんは運動部だったのよね」 「でも最近はこっちにいることが多いから、全然運動してないけどね」 などと他愛のない話を交わす2人。 すると弥勒が急に#name#のところまで歩いてきて。 2人が弥勒に視線を向けると、コホンっと咳払いをひとつ。 「#name#さまは犬夜叉と殺生丸、どちらが好きなんですか?」 「えっ?犬夜叉と殺生丸?」 「はい」 「みっ弥勒てめえ!何変なこと聞いてやがんだっ!」 密かに聞いていた犬夜叉が弥勒に詰め寄る。 だが弥勒は怯んだ様子がひとつもなく、真面目な顔をした。 「変なことではありませんよ犬夜叉。どちらを選ぶかで、#name#さまの将来が変わるんですから」 「そッ、それは…そう、だけど…よ…」 言い負かされ、段々と語尾が小さくなっていく犬夜叉。 そんな犬夜叉の頬は赤く、視線を泳がせていた。 弥勒はそんな犬夜叉をスルーし、再び#name#に向き直った。 「私は珊瑚という立派な嫁がいますが、#name#さまのお婿さまはどうするつもりで?」 「あ、珊瑚ちゃん赤くなってる」 「#name#ちゃん、今は真剣に弥勒さまの質問に答えるべきよ!」 かごめに注意され、渋々弥勒の方へ視線を向け直した。 だがやはり、決まってはいないようで。 犬夜叉と殺生丸か…、としばらく考えている様子だった。 「! 殺生丸の匂いがするぜ…」 「え?噂をすれば何とやら?」 犬夜叉が見る方向に、#name#は素早く顔を向けた。 すると微かにその影は見えて来て。 何だか、いつもより歩く速度が速い気がした。 「殺生丸ー!」 かごめもその姿に気付いたようで、大声で呼んだ。 そしてすぐさま立ち上がり、かごめはさっさと殺生丸の方へ駆けて行く。 どうやら、何か話しているようで。 ようやくかごめが話し終わると、殺生丸はさっきよりも歩くスピードを速めた。 「私を選んでくれるのだろう?#name#」 「はい?」 「おい殺生丸!#name#が選ぶのは俺に決ってんだろッ!」 「はっ?ちょ、どうしたの2人共!」 いつもと様子が丸っきり違う2人に、#name#は思わず戸惑った。 すると殺生丸に腕を引かれ、体がそちらへ傾いて。 その瞬間、反対側からも腕を引かれた。 ──そして、今に至る。 両者共に睨みあい、#name#の腕を離そうとしなかった。 ここまでムキになる殺生丸を初めて見た一行は、目を点にさせている。 「まさかとは思ったけど…殺生丸も#name#ちゃんLOVEだったなんて…」 「かごめちゃーんっ!そんなこと言ってないで助けてよーっ」 end.