◆ 愛を確かめたかった
過去に一度だけ、恋心というものを抱いた覚えがある。
それも──人間の女に。
この殺生丸も堕ちたものだな。
最初はそうやって自分を馬鹿にしていた。
だが時が経つにつれ、馬鹿にすることが馬鹿らしく思えてきたのだ。
そこらの妖怪を恐れさせてきたはずの私が。
人間などを愛するとは、私も父上に似たものだな。
「あっ殺生丸さま!あそこに#name#さんがいるよっ」
「…何?」
りんが指差す方向を見つめる。
確かに#name#の姿が合った。
──そう、私が恋心を抱いた相手は#name#。
奴は私とよく遊びを共にしていた。
だがそれも過去の話。
今となっては犬夜叉と一緒に旅をしている。
だから#name#は遠い存在であったのだ。
「! 殺生丸…てめえ、何しに──」
「殺生丸っ!」
犬夜叉が私に気付くと同時に、#name#も気付いたようだ。
昔と変わらぬ姿で、こちらへ駆けて来る。
「久しぶりだね!」
「あぁ、そうだな」
無邪気に笑う#name#。
…この笑顔に心を奪われたのなら、無理もないな。
私は懐かしむように、#name#の頭を撫でた。
「全く変わらぬな」
「むっ、これでも少しは大人になったんだよ?」
「そうだったか。気付かなくてすまない」
「ううん、いいよっ」
#name#は絶えず笑顔を私に向ける。
本当に、こういうところが変わっていない。
「おい#name#!早く行くぞ!!」
私と#name#が話していると言うのに、犬夜叉が急かすように叫んだ。
奴も変わらんな。まるで子供のままだ。
呆れた、という私の感情を#name#は悟ったように言う。
「犬夜叉こそ変わってないよ。…じゃ、私そろそろ行くね?」
「…あぁ……」
もう行ってしまうのか。
という言葉は、私の口から発せられなかった。
振り返り、そのまま行ってしまいそうな#name#。
だがその行動を止めるように、腕を強く掴んだ。
「ど、どうしたの?殺生丸」
#name#は少し戸惑ったようで。
それでも私はその腕を離さなかった。
「…好きだ、#name#」
長年の想いを、ようやく本人に晒す。
すると#name#は頬を朱に染め、目を丸くしていた。
「#name#は…どうなのだ」
「好きだよ。私も…殺生丸のこと、大好き」
少し困ったような、照れた表情。
それが愛しかった。
#name#の全てが愛おしかった。
ようやく想いを分かり合えた。
それが私にとって、何ごとよりも嬉しいもので。
ほんの少し力を入れ、#name#の体をこちらへ引っ張った。
#name#の背中に腕をまわし、力強く抱きしめた。
「これからは…私と一緒だ」
end.
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