愛を確かめたかった

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過去に一度だけ、恋心というものを抱いた覚えがある。 それも──人間の女に。 この殺生丸も堕ちたものだな。 最初はそうやって自分を馬鹿にしていた。 だが時が経つにつれ、馬鹿にすることが馬鹿らしく思えてきたのだ。 そこらの妖怪を恐れさせてきたはずの私が。 人間などを愛するとは、私も父上に似たものだな。 「あっ殺生丸さま!あそこに#name#さんがいるよっ」 「…何?」 りんが指差す方向を見つめる。 確かに#name#の姿が合った。 ──そう、私が恋心を抱いた相手は#name#。 奴は私とよく遊びを共にしていた。 だがそれも過去の話。 今となっては犬夜叉と一緒に旅をしている。 だから#name#は遠い存在であったのだ。 「! 殺生丸…てめえ、何しに──」 「殺生丸っ!」 犬夜叉が私に気付くと同時に、#name#も気付いたようだ。 昔と変わらぬ姿で、こちらへ駆けて来る。 「久しぶりだね!」 「あぁ、そうだな」 無邪気に笑う#name#。 …この笑顔に心を奪われたのなら、無理もないな。 私は懐かしむように、#name#の頭を撫でた。 「全く変わらぬな」 「むっ、これでも少しは大人になったんだよ?」 「そうだったか。気付かなくてすまない」 「ううん、いいよっ」 #name#は絶えず笑顔を私に向ける。 本当に、こういうところが変わっていない。 「おい#name#!早く行くぞ!!」 私と#name#が話していると言うのに、犬夜叉が急かすように叫んだ。 奴も変わらんな。まるで子供のままだ。 呆れた、という私の感情を#name#は悟ったように言う。 「犬夜叉こそ変わってないよ。…じゃ、私そろそろ行くね?」 「…あぁ……」 もう行ってしまうのか。 という言葉は、私の口から発せられなかった。 振り返り、そのまま行ってしまいそうな#name#。 だがその行動を止めるように、腕を強く掴んだ。 「ど、どうしたの?殺生丸」 #name#は少し戸惑ったようで。 それでも私はその腕を離さなかった。 「…好きだ、#name#」 長年の想いを、ようやく本人に晒す。 すると#name#は頬を朱に染め、目を丸くしていた。 「#name#は…どうなのだ」 「好きだよ。私も…殺生丸のこと、大好き」 少し困ったような、照れた表情。 それが愛しかった。 #name#の全てが愛おしかった。 ようやく想いを分かり合えた。 それが私にとって、何ごとよりも嬉しいもので。 ほんの少し力を入れ、#name#の体をこちらへ引っ張った。 #name#の背中に腕をまわし、力強く抱きしめた。 「これからは…私と一緒だ」 end.

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