◆ 相合傘日和
いつものように枯れ井戸を通り、戦国時代へやって来る。
するとそこは、かなりの雨が降っていた。
一応、傘は持って来ている。
けれど1人分…自分の分しか持っていなくて。
あの人を思うと、もう1人分いることに気付いた。
「どうしよう…取りに帰ろうかな」
踵を返し、井戸の縁に足を掛けたが、その間にもあの人が濡れて、風邪でもひいたら…。
そんな嫌な考えを消すように、ふるふると頭を振った。
そして井戸に背を向け、あの人の元へ駆け出した。
走っている内に、あの人の姿が見えてきて。
よく見ると、やっぱりびしょ濡れになっていた。
「蛮骨ーっ!」
気付いてもらえるように、大きく手を振る。
すると蛮骨もこちらに気が付いて、手を振り返してくれた。
「#name#、来たのか!」
「うんっ早く蛮骨に会いたくて!」
蛮骨のそばへ駆け寄り、持っていた傘を差し出した。
きょとん、とした蛮骨の顔。
思わず可愛いなぁ…なんて思ってしまって。
顔を綻ばせていると、蛮骨が心配そうな表情で言ってきた。
「#name#はどうすんだ?俺が使ってたら、#name#の分がねえだろ?」
「大丈夫だよ?私の分は現代に取りに戻ればいいもん」
笑顔で言うが、蛮骨は納得がいかないようで。
私の手元に、ぐいっと傘を押し付けてきた。
「俺こそ大丈夫だから。むしろ、#name#が風邪ひくのが嫌だ」
「蛮骨…。で、でも私だって、蛮骨が風邪ひくの嫌っ」
押し付けられた傘を、負けじと押し返す。
多分、また同じようなことを言われて、再び押し返されるだろう。
そう考えた私は、さっと蛮骨に背を向けて走りだした。
──つもりだった。
気付いた頃には強く腕を引かれ、そのまま蛮骨に抱きしめられてしまう。
「ばっ蛮骨…!?」
「こうしてくっついてりゃ、1つの傘でも濡れねえだろ?」
蛮骨に言われてやっと気付いた。
確かにくっついているおかげで、2人共傘の下に収まっている。
気付いたことを察したのか、蛮骨が「なっ?」と笑いかけてくれた。
私は笑顔で頷き、私は蛮骨の胸に顔をうずめた。
高鳴る鼓動に、気付かれてないかな。
なんて心配は、嬉しさに溶けて消えていった。
end.
back