◆ 勘違いで気付いたこと
私が犬夜叉たちと旅に出て、もう1年ぐらいは経っただろうか。
初めて犬夜叉と出会って、次第に仲間も増えてきて。
仲間同士のケンカも、色んなことにも慣れてきていた。
けれど、ひとつだけ。
ひとつだけ、慣れることのできないものがあった。
「かごめ、どうすりゃいいんだ?」
「喜びそうなものをあげるの」
「喜びそうなもの、って何だよ」
「それくらい自分で考えなさいよ!」
今でも見られる、この些細なやり取り。
これこそが、私の慣れることのできないものだった。
犬夜叉は私のことも、気には掛けてくれる。
それでも、それ以上にかごめちゃんとの会話とか、色んなやりとりが多い。
いつも胸が苦しくなる。
嫉妬、なのかな…。
別に犬夜叉のこと、好きだなんて思ったことないのに。
好きじゃなくても、嫉妬することぐらいあるのかな…。
「おい、#name#っ」
「!」
急に声を掛けられ、驚いてしまう。
その声の主、犬夜叉に視線を向けると、結構な距離があった。
いつの間にか、歩く足を止めちゃってたんだ…。
そう思いながら、犬夜叉たちに向かって「ごめんごめんっ」なんて言いながら、軽く走って見せた。
すると犬夜叉が、こっちに歩いてきて。
どうしたんだろう。
思わず立ち竦むと、犬夜叉がもう目の前まで来ていた。
「ど…どうしたの、犬夜叉?」
何故だか怒られそうな気がした。
そう言えば今日、朔の日だっけ…。
犬夜叉は早く次の村に行きたかったんだろうけど、私が足を止めたせいで…。
怒られそうな気がする、じゃなくて、怒られるだろうと、私は俯いた。
けれど犬夜叉はこう言った。
「#name#、何か好きなもんあるか?」
「えっ…?」
予想外の言葉に、思わず顔を上げる。
怒って…ない…?
「い、犬夜叉…怒って、ないの…?」
「はあ?何でおれが訳もなく怒なきゃといけねえんだ?」
「だって今日、朔の日だし。早く村に行きたいんじゃないかなって…」
「まあ…それもそうだけどよ。てか分かってたんなら、何で止まってたんだ?」
「それは…」
思わず言葉が詰まる。
私の勝手な嫉妬と思い込み。
それを知って、犬夜叉はどんな反応をするだろう。
想像、したくないな…。
いつまでも私が言おうとしないのを見計らったのか、犬夜叉は振り返った。
「お前ら、先に行っててくれ!おれと#name#は話があるから、後で追う!」
そう大声で言うと、かごめちゃんたちは理解したのか、手を振ってきた。
小さく「分かったー!」と言う声も聞こえる。
行っちゃったけど、どうすればいいんだろ…。
そんなことを思いながら、私が犬夜叉を見ていると振り返ってきた。
「で?それは、何だよ」
「考えごと、してた…。
…い、犬夜叉が…私のことより、かごめちゃんとばっかり話したりするから辛いって…っ!」
私はいつの間にか、声を荒らげて言ってしまっていた。
はっと我に返り、犬夜叉の顔を見た。
見るからに驚きを隠せていない。
目を丸くした犬夜叉に、私はすぐに頭を下げて謝った。
「ごっごめん、何でもないのっ!もう忘れて!!」
「……か…」
「えっ…?」
「バーカ!何言ってんだよお前っ」
頭を上げると、犬夜叉は何故か笑っていて。
ぽかんと口を開けていると、私の頭をくしゃ、と撫でてきた。
「お前、ちゃんと自分の誕生日覚えてんのか?」
「え?誕生日…?…あ」
「思い出したか?…お前に渡すもん、何がいいかあいつに聞いてただけだっての」
「そう…だったの…?」
そうと知った途端、さっき自分で言ったことが恥ずかしくなり、顔が熱くなるのが分かった。
犬夜叉はなおも笑っていて。
何だ、ただの勘違いだったんだ。
そう思うと安心感が心に広がって、すごく嬉しくなった。
あぁ…私、犬夜叉のこと好きなんだ。
end.
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