勘違いで気付いたこと

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私が犬夜叉たちと旅に出て、もう1年ぐらいは経っただろうか。 初めて犬夜叉と出会って、次第に仲間も増えてきて。 仲間同士のケンカも、色んなことにも慣れてきていた。 けれど、ひとつだけ。 ひとつだけ、慣れることのできないものがあった。 「かごめ、どうすりゃいいんだ?」 「喜びそうなものをあげるの」 「喜びそうなもの、って何だよ」 「それくらい自分で考えなさいよ!」 今でも見られる、この些細なやり取り。 これこそが、私の慣れることのできないものだった。 犬夜叉は私のことも、気には掛けてくれる。 それでも、それ以上にかごめちゃんとの会話とか、色んなやりとりが多い。 いつも胸が苦しくなる。 嫉妬、なのかな…。 別に犬夜叉のこと、好きだなんて思ったことないのに。 好きじゃなくても、嫉妬することぐらいあるのかな…。 「おい、#name#っ」 「!」 急に声を掛けられ、驚いてしまう。 その声の主、犬夜叉に視線を向けると、結構な距離があった。 いつの間にか、歩く足を止めちゃってたんだ…。 そう思いながら、犬夜叉たちに向かって「ごめんごめんっ」なんて言いながら、軽く走って見せた。 すると犬夜叉が、こっちに歩いてきて。 どうしたんだろう。 思わず立ち竦むと、犬夜叉がもう目の前まで来ていた。 「ど…どうしたの、犬夜叉?」 何故だか怒られそうな気がした。 そう言えば今日、朔の日だっけ…。 犬夜叉は早く次の村に行きたかったんだろうけど、私が足を止めたせいで…。 怒られそうな気がする、じゃなくて、怒られるだろうと、私は俯いた。 けれど犬夜叉はこう言った。 「#name#、何か好きなもんあるか?」 「えっ…?」 予想外の言葉に、思わず顔を上げる。 怒って…ない…? 「い、犬夜叉…怒って、ないの…?」 「はあ?何でおれが訳もなく怒なきゃといけねえんだ?」 「だって今日、朔の日だし。早く村に行きたいんじゃないかなって…」 「まあ…それもそうだけどよ。てか分かってたんなら、何で止まってたんだ?」 「それは…」 思わず言葉が詰まる。 私の勝手な嫉妬と思い込み。 それを知って、犬夜叉はどんな反応をするだろう。 想像、したくないな…。 いつまでも私が言おうとしないのを見計らったのか、犬夜叉は振り返った。 「お前ら、先に行っててくれ!おれと#name#は話があるから、後で追う!」 そう大声で言うと、かごめちゃんたちは理解したのか、手を振ってきた。 小さく「分かったー!」と言う声も聞こえる。 行っちゃったけど、どうすればいいんだろ…。 そんなことを思いながら、私が犬夜叉を見ていると振り返ってきた。 「で?それは、何だよ」 「考えごと、してた…。 …い、犬夜叉が…私のことより、かごめちゃんとばっかり話したりするから辛いって…っ!」 私はいつの間にか、声を荒らげて言ってしまっていた。 はっと我に返り、犬夜叉の顔を見た。 見るからに驚きを隠せていない。 目を丸くした犬夜叉に、私はすぐに頭を下げて謝った。 「ごっごめん、何でもないのっ!もう忘れて!!」 「……か…」 「えっ…?」 「バーカ!何言ってんだよお前っ」 頭を上げると、犬夜叉は何故か笑っていて。 ぽかんと口を開けていると、私の頭をくしゃ、と撫でてきた。 「お前、ちゃんと自分の誕生日覚えてんのか?」 「え?誕生日…?…あ」 「思い出したか?…お前に渡すもん、何がいいかあいつに聞いてただけだっての」 「そう…だったの…?」 そうと知った途端、さっき自分で言ったことが恥ずかしくなり、顔が熱くなるのが分かった。 犬夜叉はなおも笑っていて。 何だ、ただの勘違いだったんだ。 そう思うと安心感が心に広がって、すごく嬉しくなった。 あぁ…私、犬夜叉のこと好きなんだ。 end.

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