優しい君は珍しい
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四角い天井が全て視界に映る。 天井に備え付けられた電気の豆球が、ほんのりと明るく部屋を照らしていた。 ──あれ…ここ、私の部屋…? ぼーっとする頭でそんなことを思う。 #name#は戦国時代にいたはずだが、今は何故か現代に戻っているのだ。 それもさかのぼること1時間── 「う…、っケホ、ゲホっ」 「どうしたの#name#。顔、赤いよ?」 「もしかして、熱でもあるんじゃろうか」 珊瑚と七宝が、心配そうに#name#の顔を覗き込む。 #name#はうつむく顔をゆっくりと上げ、あどけない笑顔を向けた。 「大丈夫だよ~…ちょっとぼーっとするけど…」 「それは大変です。どれ、私が──」 「法師さまは黙ってて。どうせまたロクでもないこと言うんだろ?」 「珊瑚…それはひどい偏見ですね…」 #name#に手を伸ばしかけた弥勒を、珊瑚が飛来骨でゴツッと殴った。 七宝も呆れたような表情だ。 「弥勒はバカじゃのう…」 「バカとは何ですかバカとは」 「弥勒がスケベなのは、今に始まったことじゃねえよ」 「犬夜叉まで…」 苦笑しながら、ため息をこぼす弥勒。 その時、いつもなら苦笑いですませる#name#の体が、ぐらりと傾いた。 「! #name#っ!?#name#っしっかりしろ!」 ドサッと音を立て、地面に倒れ込む#name#を半分起こし、声を張り上げる犬夜叉。 だが、視界がかすれて行く#name#は、声が全然出せなくて。 #name#はそっと、犬夜叉の方へ顔を向け、目を細めていった。 「おい#name#!?#name#っ!」 ──あぁ…犬夜叉が心配してくれてるなんて…珍しいなぁ…。 あぁでも、もう駄目だ…頭が重、い… #name#は遠のく意識に、身を任せてしまった。 ──そして、今に至る。 意識が戻った#name#は、ベッドの上に寝かされていた。 さっきまであっちにいたはずなのに…と、状況が読み込めていない。 無理にでも状況を把握しようとしたせいで、ズキリと頭が痛んだ。 痛む場所を押さえながら、ゆっくりと体を起こした。 「…おう、起きたか」 「! 犬、夜叉…っ?」 ふいに声を掛けられ、ぴくりと肩を上げた。 声の主へ視線を向けると、椅子の上にちょこんと座る犬夜叉の姿があった。 「何で、ここに…?」 「何でって…お前がぶっ倒れたから、見ててやったんだっての」 「…そうなんだ……ありがとね」 さりげなく微笑むと、犬夜叉はほんのりと頬を赤く染めた。 思わずくすっ、と笑うと犬夜叉が声を上げる。 「なっ何笑ってやがるっ!」 「だって犬夜叉ってば、可愛いんだもん」 「か、可愛い…だと!?」 心底驚いたような表情で後ずさりを見せる犬夜叉。 けれど、その表情もすぐに変わって。 気がつくと、目の前まで犬夜叉が来ていた。 「可愛いのは…お前の方だっての…」 「え…っ───!」 唇を深く、重ね合う。 #name#はただただ、驚いていた。 何があったのか。 今、何が起きているのか。 急展開についていけない#name#は、犬夜叉にされるがままだった。 「#name#の寝顔…可愛かった」 「そっそんなこと…」 「いや、すげえ可愛かった」 「もう…馬鹿…っ」 #name#は照れくさそうに、頬を赤く染める。 そんな#name#の頭を、犬夜叉は優しく撫でていた。 end.