君はとても不器用
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さらさらと透き通った水が静かに流れる河原でのこと。 2人ほどの人影が、河原の石を見つめていた。 「ねぇ、犬夜叉は"水切り"って知ってる?」 「水切りぃ?何だそりゃあ」 聞き慣れない単語に、顔をしかめる犬夜叉。 その時#name#が、大量の石の中から平らで薄い石を見つけ出した。 そしてそれを構え、腰を屈めて川に向かって投げ飛ばした。 するとそれは、水をぱしっぱしっと水を切って行った。 3回ほど波紋を広げると、トポンと音を立てて沈んでいく。 「こういう遊びのことっ」 「…ほぉ~……」 犬夜叉には珍しく、感心したように、波紋が広がる水面を見つめていた。 そして、ぱっと表情を変えるとにやりと不敵に笑みをこぼす。 手当たり次第に、足元の石をひとつ拾い上げた。 「石を投げりゃいいんだな!簡単だぜっ!」 「えっ、いや普通に投げるだけじゃ──」 #name#の台詞も聞かず、真っ向から思いっきり投げ入れてしまう。 それはドボンっと鈍い音を立てて沈むだけで。 水を1度も切れてなどいなかった。 唖然とする犬夜叉は、ぽつりと呟きをこぼした。 「…何でだ?」 「っぷ!」 思わず吹き出してしまう#name#。 それを見た犬夜叉は、ムっと口を吊り上げた。 そして、ツーン!という音が聞こえそうな顔のそむけ方をする。 「わ、笑うこたぁねぇだろっ!」 「だって、犬夜叉ってば全然できてないんだもんっ!」 ついには腹を抱えて笑い出してしまう。 それのせいで、思いっきりふてくされてしまった犬夜叉。 さすがにそれを見兼ねた#name#は、犬夜叉の顔を覗き込んで言った。 「ごめんごめん、ちょっと笑いすぎちゃった。…怒った?」 「………」 「うっ、怒ってるでしょ……」 覗きこまれた顔を、ふいっと逸らす姿で#name#は確信してしまった。 これは少しだけど、怒ってる。 何度も顔を覗き込み、謝罪を続ける。 「ごめんってば」とか「教えてあげるから許して?」とか。 すると、ようやく犬夜叉も、渋々だが許してくれたようで。 #name#はほっ、と胸を撫で下ろした。 「…で、早く教えろよ」 「うん!あのね、薄くて平らな石を投げるの」 「なんだ、なら本当に簡単じゃねぇか。っよし!」 ころっ、と気分を変えると、犬夜叉は#name#の言うような石を探した。 #name#も同時に探していると「あった!」と犬夜叉の声が。 犬夜叉はそれを掴むと、再び真っ向から投げ入れる。 「あ」 トポン。 石はそんなむなしい音を立てて、底にこつんと沈んでしまった。 これから投げ方も説明しようと思っていた#name#は、はぁ…とため息をこぼしてしまう。 犬夜叉は#name#の方を振り返った。 「出来ねぇじゃねぇか」 「今度から、人の話は最後まで聞こうね…」 end.